新しい“土壌”で未来の農業を変える名古屋大学発ベンチャー「TOWING」|BRAVE Alumni Interview vol.3

ディープテックなど高度な科学技術シーズの事業化を支援するアクセラレーションプログラム「BRAVE」。今回は、2021年度のプログラムにご参加いただいた株式会社TOWING(以下、TOWING)の代表取締役である西田宏平氏にインタビューを実施しました。

「食べる喜びを、作る喜びから、デザインする」をミッションに掲げる同社は、名古屋大学出身の西田氏が社会に出た後に大学の研究成果を使って立ち上げたスタートアップです。

同社がBRAVEに参加したきっかけや、プログラムから得られた経験等について伺いました。


農家にも環境にも優しい革新的な”土壌”の開発

―TOWINGの事業内容を教えてください


西田:私たちは、名古屋大学の研究を社会実装するためのスタートアップで、環境に配慮した人工土壌「高機能ソイル」を開発しています。高機能ソイルとは、植物の炭等の多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理してつくられた人工土壌のこと。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化しました。

通常、農業に適した土壌を作るには3-5年はかかるのですが、高性能ソイルはわずか1ヶ月で良質な土壌になります。そこで作られた作物は病気にもなりにくく、私たちが提供している栽培システムと併せて、農家の生産性を高めることができるのです。

加えて、高機能ソイルは炭素の固定や吸収効果もあるため、環境に優しいのも特徴です。炭素クレジットにも認められており、どれくらいの二酸化炭素を削減したかも数値化できるようにしています。削減した二酸化炭素は、二酸化炭素を排出する企業に販売することも可能です。

起業への想いを胸に社会人に。そこで得たものとは

ー西田さんが起業した経緯を聞かせてください

私はもともと宇宙と農業に興味があって、どちらかの仕事に携わりたいと思っていました。初めて起業を考えたのは大学生の時、名古屋大学のTongali(とんがり)という起業プログラムを受講したのがきっかけです。プログラムの最後には私たちのアイデアが評価され、賞金50万円ももらいました。

そのまま起業する話もありましたが、当時のメンバーだった夫婦にちょうど子供ができたタイミングで、私しか動けなくなっていました。加えて、私自身も起業するには未熟で、まだまだ起業できるレベルではないと思い、自動車部品メーカーに就職することにしました。

―いつかは起業することを考えて社会に出たのですね

そうですね。そのため、仕事をする傍ら起業の準備も進めていて、優秀な人に声をかけてチームづくりも進めていました。大学の先輩やその繋がりから人を紹介してもらいチームを再編成していったのです。

機会があって入社2年目にビジネスコンテストに出た時も、多くの会社の先輩が助けてくれて。その時に助けてくれた人にも声をかけていて、起業してから会社にジョインしてくれた方も何人かいます。一度社会に出たのは、私にとってとても良い経験になりましたね。

ビジネスモデルを格段にブラッシュアップできた「BRAVE」


―BRAVEに参加したきっかけを教えてください

実は私たちが参加した1年前のプロジェクトの時もお誘いを受けていたのですが、当時はまだ会社として立ち上がったばかりで辞退していたのです。1年かけて事業モデルをブラッシュアップし「これならいけそうだ」と、担当の有馬さんに報告したところ「同じことを考えていた」と言われて参加するに至りました。

―なぜいけそうだと思ったのでしょうか?

スケールできるビジネスモデルを構築できたからです。起業当初は土を売る事業しか考えていなかったのですが、それだけでは事業をスケールするのは難しいと思っていて。そこから野菜を作ったり、カーボンクレジットを組み込んだりと複合的に事業を組み立てていきました。

まだまだブラッシュアップの余地はありましたが、ビジネスモデルの基盤はできたと想い、プログラムに挑戦することにしたのです。

― プログラム中はどのように過ごしていたか聞かせてください

毎日のようにメンターの有馬さんと壁打ちしていました。有馬さんは農業の知見が豊富で、ビジネスモデルを組むのにも長けています。加えて、農水省の方にもメンターとして入っていただき、国の方針なども聞かせてもらったので、ビジネスを組むのに大いに役立ちました。シリーズB以降になればスタートアップでも国の方針を先取りしてビジネスを組めるのですが、通常私たちのようなシリーズAの会社が国の方針を聞ける機会はそうないので、有難かったです。

―国の方針は事業計画にも大きく影響するのでしょうか?

大きく影響しますね。行政は農水省が掲げたテーマに即して技術を探し、そこに補助金や優遇税制を紐づけていきます。そのため、テーマに沿った事業を展開していれば「うちのサービスを導入すれば、税制が優遇されますよ」と言えるわけです。

補助金や優遇税制の対象になっているサービスなら、ユーザーも安心して導入できますよね。それだけ事業が展開しやすくなるのです。

BRAVEを通して大企業との付き合い方も変わった

―そのほか、BRAVEに参加したメリットがあれば教えてください


メリットの一つは、メンバーのインプットが進んだこと。もともと同じ研究室にいたメンバーは農業への知見も深かったのですが、中途入社したメンバーたちは決して農業に詳しいわけではありません。しかし、プログラム中に様々なメンターと話をすることで、メンバー全員の知見が格段に磨かれたと思います。

また、私自身も大きく成長できました。プログラムに参加する前は、「自分たちだけのリソースでビジネスをしなければいけない」と思っていましたが、いろんな人に助けられたことで社外のリソースもどんどん使おうと思えるようになりました。

ただでさえスタートアップはリソースが限られるため、外部の方の力を借りて事業を展開していく力は今後も役立つと思います。

―考え方が変わって、大企業との付き合い方も変わったのでしょうか?

そうですね。BRAVEに参加する以前から他社と組んで共同研究をしていましたが、共同研究とは名ばかりで自分たちばかり動いていることもありました。しかし、プログラム後はしっかりパートナーを巻き込み、一緒に動けるようになったと思います。

一方的に尽くすような関係になると、お金をもらって終わってしまいますが、一緒にプロジェクトを進めていけば次のプロジェクトに繋がる。そのことに気づいてからは、目先の数百万のお金より、数年後の数億を狙って動けるようになりました。

中にはそのような関係を嫌がる会社さんもいますが、そのような場合は目先のお金を捨ててでも、よりよい関係を築ける会社と組めるようになりましたね。

―大企業だけでなく、スタートアップとの繋がりについても聞かせてください

同じ時期にBRAVEに参加したスタートアップとの繋がりは今でも続いています。特に同じ農業系のスタートアップとは一緒にプロジェクトを作る話にもなりました。

BRAVE直後には実現しませんでしたが、連絡を取り続けて最近になって実現しそうな会社もあります。お互いに事業が成長していけば、今後も共創していく機会も増えていくと思います。

―最後にBRAVEに興味のある方にメッセージをお願いします。

BRAVEは、ほかのアクセラレーターと比較しても批評家よりも実務家が多い印象で、自分たち以上に手を動かしてサポートしてくれるメンターの方々がいます。的確なアドバイスもいただけるので、ビジネスモデルが大幅にブラッシュアップされました。自分たちの技術をどう社会に実用化させていけばいいか模索しているスタートアップの皆さんにはぜひ参加してほしいです。

CO2を削減する野菜「宙ベジ(そらべじ)」を発表し、ECサイトオープン


TOWING社では、2022年9月5日(月)に、新ブランド「宙ベジ」を発表し、宙ベジを販売するECサイトをオープン!

宙ベジとは、持続可能な食料生産手法で栽培された作物のブランド名です。TOWINGの食糧生産手法は、CO2を農地に固定することで排出量を削減できるサステナブルな農法のため、栽培量を増やすことでより多くのCO2を削減できます。

ECサイトはこちら:https://soravege.towing.co.jp/
Beyond Next Ventures

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