すべての人が平等で最適な医療を受けられる世界を目指す、名古屋大学発学生ベンチャー「GeCS」|BRAVE Alumni Interview vol.4

ディープテックをはじめ様々な技術シーズの事業化を支援するアクセラレーションプログラム「BRAVE」。今回は、2021年度のプログラムにご参加いただいたGeCS株式会社(以下、GeCS)の代表取締役である村上 嘉一氏にインタビューを実施しました。

「すべての人々に、平等で最適な医療を届ける。」をビジョンに掲げる同社は、村上氏が名古屋大学情報学部2年時に名古屋大学・名古屋工業大学の同級生と創業したスタートアップです。同社がBRAVEに参加したきっかけや、プログラムから得られた経験等について伺いました。


―GeCS(ジークス)の事業内容を教えてください。

村上:地域の家族世帯やクリニックをはじめとする一次医療機関のハブになるようなプラットフォーム事業を展開しています。


2021年に、小児科医と共同で小児医療の情報アプリ「あんよ」を開発しました。子育ての中でも日常的な悩みにフォーカスしており、医師監修の”安心”で”正確な情報”を受け取ることができます。

次なる事業のステップとしては、個人の医師が隙間時間に「あんよ」上でオンライン診療を行うバーチャルクリニックを展開していく予定です。保護者の方は一般的なクリニックや病院の診察時間外(平日夜間や土日祝など)に医師の診断を受けることができます。

保護者の方は子どもの様々な様子に関して家で悩みを抱えていますし、診察までの壁も存在します。弊社では、保護者の方の不安に合わせて「検索」「相談」「オンライン診療」を全て在宅で行える医療サービスの提供を目指しています。

ー村上さんが起業した背景をお聞かせください。

高校1年生の時に難病を患った叔母が32歳という若さで子どもを3人残して亡くなったのを見て、医療の重要性に気づきました。その時から「医療で人のためになることをやりたい」と思い、最初は医学部を志望するものの、学費もレベルも高く断念するしかなく…。

何人かの友人が医学部への進学を決める中、諦めたことはとても悔しい経験でした。ただ、医療への気持ちは変わらず、現場を支える仕組みや事業をつくることで関われないか?と思い始め、デジタル・ITを活用したビジネスをしようと高校生ながら起業を決意し、名古屋大学の情報学部に進学しました。

プロセスにコミットする伴走者たちと事業化に一直線

―BRAVEに参加したきっかけを教えてください。

そもそもBeyond Next Ventures(以下、BNV)を知ったのが、1年前の「Tongaliアイデアビジネスプランコンテスト」でした。Tongaliは東海地区(愛知県・岐阜県・三重県・静岡県)の大学および大阪大学・熊本大学の学部生・大学院生・ポストドクターを対象として、自らが温めているアイデアや解決したい課題などを発表するコンテストです。自分は出場者としてピッチを行い、BNVの金丸さんが審査員をしていて、名刺交換をしました。

その後金丸さんと月1の面談を通じて事業に関する様々な相談をしていた矢先に、BRAVEの案内をもらい、ちょうどビジネスプランの精度を高めるニーズもあったため、応募しました。

―BRAVEでは何をしましたか?

具体的な事業計画は持っていなかったため、ほぼゼロベースで事業計画を練りました。「あんよ」というプロダクトは既にある状態でしたので、その市場展開を中心とした中長期的な事業計画の完成に向けて、マーケット等外部環境のリサーチやプロダクトの強みの源泉(売りポイント)等に関する議論を行いました。

BRAVEでは外部メンバー数名と共にチームを組成して取り組みますが、週に1回以上は必ず全員でミーティングを実施しました。加えて、一人一人との1on1も行いました。進め方としては、毎回ミーティング時に自分から各メンバーにタスクを振り分け、次のミーティングに持ってきてもらい、ディスカッションを進める、という具合です。

―BRAVEではどんなメンバーにジョインしてもらいましたか?

GeCSとしてはほぼ私一人で参加したのですが、プログラム期間中はBNVの金丸さんのほかに、製薬会社のマーケティングや営業をやってきた方1名と、公認会計士1名と、製薬会社の事業部の方1名の計3名の方がチームメンバーとして加わり、事業プランを共に考えました。

― ビジネス経験のあるメンバーがジョインしたメリットはありましたか?

はい、沢山あります。私自身は社会人経験がないまま起業しており、「ビジネスを運用した経験」はほとんどありません。その中で、日々ビジネスの渦中で様々な業務をされている3名には自分だけでは気づけない視点、「ここは外しちゃいけない」というポイントを気づかせてもらいました。


実は、BRAVE参加当初は「あんよ」をクリニックから紹介されないと利用できないクローズドなアプリにする予定でした。しかし、BRAVEでの2回目のミーティングで、「オープンにすべきではないか」という議論になりました。その背景には、マーケットリサーチ、あんよの強みの分析などに基づく的確な理由がありました。

私は頑固な性格なので最初は抵抗していたのですが(笑)、結果として現在あんよは誰でもダウンロードして使えるアプリとして展開しており、良い決断だったと思っています。

―現在も当時のメンバーとは付き合いはありますか?

はい、3人中2人の方には完全な仲間として副業でGeCSにジョインしてもらっており、そのうちの1人はかなりコミットしてもらっています。

“本気にさせられる感”で成長を実感

ーBRAVEと他のアクセラとの違いはありますか?

BRAVEは「本気にさせられる感」が違いました。他社のアクセラでは「メンターとの面談を週1で受けられます」という権利のようなものをもらうこともありますが、BRAVEでは外部のビジネス人材や専門家とチームを組むため、「外部の人を巻き込んだ以上やるしかない」となるんです(笑)。

また、2カ月という短い期間ではありますが、「プロセスにコミットしてくれる伴走者」という印象も強くあります。メンタリング後に「一週間後に正解持ってこい」ではなく、常にディスカッション相手になりながらよりよい事業計画を一緒に作っていく、そんな感覚ですね。

―BRAVE参加前後の変化はありますか?

事業面においては、数値的なもの含めしっかりと事業計画を作れた点です。プロダクトをどうしていくか、という視点だけではなく、事業全体として「何をゴールに具体的にどういう成長をすべきか」という道筋を描けるようになったことは大きいですね。

また、私自身の変化として、事業を中長期の目線で捉えられるようになったことに加えて、視座が上がった感覚があります。大人の人たちと一緒に事業をブラッシュアップしていく過程で、結構バチバチした瞬間もありました。そういう経験も含めて、いろんな角度から物事を見れるようになりました。

―最後にBRAVEに興味のある方にメッセージをお願いします。

BRAVEは圧倒的にメンバー全員の熱量が高く、受け身ではなく主体的に事業を創る仲間に出会えます!真剣により良い事業を創るために、お互いがフラットに議論し合う。学生自体の熱い部活のような空気感があります。個人的には全ての起業家に参加してほしいプログラムです。

いよいよ小児科のオンライン診療サービスを開始

GeCSでは2022年内にも小児科のオンライン診療サービスの開始を予定しています。新型コロナウイルス禍が長引き、子供を病院に連れて行くのに抵抗がある保護者が増えている背景を踏まえて、病院の医師と利用者をつなぎ、診療を受けられるようにする予定です。

Beyond Next Ventures

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